埼玉県の離婚弁護士 レンジャー五領田法律事務所

妻を寝取られた男②

妻を寝取られた男

真一はしばらく震えと激しい鼓動が止まらなかった。「落ち着け、落ち着け」真一は必死で自分に言い聞かせた。
立て続けに缶ビールを3本飲み終えたところでようやく少しだけ冷静さを取り戻した真一は、頭の中でこの出来事を整理してみた。

あのメッセージと美帆の様子からわかったこと。確実ではないがかなり濃厚なこと。
・美帆はWOODYという男と浮気をしており、今日の昼間ふたりで会っていた
・当然肉体関係もあるだろう
・逢引は、週3で入っている美帆のパートが休みである平日の昼間。真一が仕事に、小百合が学校に行っている時間帯であろう。木曜は小百合がピアノのレッスンに行く日だから消去法でいくと火曜日が怪しい。今日は火曜日。これは間違いなかろう。

真一の働く不動産販売の会社は、間近にベイエリアの大規模マンションの新規販売を控えており、営業2部の課長である真一は明日も朝から幹部会議が予定されている。今夜も早く寝ないといけない。

真一夫婦の寝室にはベッドがふたつ。すぐ隣で美帆はすでにぐっすりと眠っている。
風呂からあがり、ベッドに横になっても、疲れているはずなのに、いつもはビール3缶飲めば多少は酔ってくるのに、今夜は美帆の疑惑が頭の中に渦巻いて眠気が全くない。

もちろん、あのメッセージだけで美帆の浮気が確定したわけではなく、真一の思い過ごしである可能性もなくはない。しかし、打ち消したい気持ちとは裏腹に、しばらく前から、美帆がぐったりと疲れた様子でさっさと寝てしまう日が度々あること、美帆の方からセックスを誘ってくることがなくなったこと、美帆が少し痩せてきれいになったこと…疑惑を裏付けるような根拠もいくつか思い当たる。
結局、一睡もできないまま真一は朝を迎えた。

出社しても大切な会議の中身が頭に入ってこない。疑っては否定し、否定しては疑い、疑心の無限ループに陥ってしまったようだ。「WOODYとは何者だ?いつからの関係?どうやって知り合った?これから一体どうするつもり?…」真一の中で次々と疑問がわき起こり、何とかしてそれを知りたいと強く思うようになってきた。

その日は夕方に仕事が一段落したので、昨夜一睡もできなかった真一は早めに帰宅した。
美帆は全くいつものまま。真一はそれとなく探りを入れてみた。
「なんか昨日は疲れてたみたいだね。どこかに行ってたの?」
「あ、昨日はお友達と上野にお買い物に行っていっぱい歩いたから、そのせいかな?」
「お友達って?」
「岡崎さんって人。パートの同僚で歳も近くて仲良くしてるの」
「ふ〜ん、そうなんだ」
火曜日はWOODYと会っていたはずだから、美帆は明らかに嘘をついている。それなのにまるで用意していたかのような返答が即座に返ってきたことで、真一はまずます確信を強めた。美帆本人に浮気を白状させるには、まずは自分が先に確たる証拠を掴まなくてはならない。『絶対に真実をあばいてやる』真一はかたく決心した。
現時点で美帆が浮気をしていることはほぼ確実。まずは相手を特定するのが先決だろう。そのためには真一が疑念を抱いていることを絶対に美帆に感づかれないようにする必要がある。

これまでずっと信頼してきた妻の裏切り行為を知りながらも、何事もなかったかのような顔をして同じ部屋で毎日生活を共にすることは大きな精神的苦痛を伴うが、怒りや嫉妬、悔しさで胸をえぐられるような感覚が、真一の『真実をあばく』ための原動力となっていた。