埼玉県の離婚弁護士 レンジャー五領田法律事務所

父親たちよ、よく眠るがいい!

現代において強い男とはどんな奴をいうのか突然尋ねられたらなんて答えるだろう。もちろんそんな質問されたことはないし、突然そんなことを尋ねられたら何かの悪い勧誘だと思い、そそくさとその場を立ち去るに違いない。が、仮のもしもで答えるなら、わたくしは四の五の言わずに「眠る男だ」と答える。レンジャー訓練中に教官から聞いた興味深い話がある。その隊員は裏ルートで訓練計画を入手し、いつ非常呼集が掛かるのかの全てを掌握していた。だから、他の隊員がいびきの大合唱を奏でている間、その隊員だけが一人目を爛々、心臓をドギマギさせて時計と睨めっこしていたそうだ。「そいつがどうなったと思う?」と教官は煙草を燻らせながらに訊いた。教官はわたくし達の答えを待つことなく言った。「3想定持たなかった」と。その隊員は裏ルートが築けるほどの部隊経験を持ち、総じて用意周到で訓練に挑んだはずだ。しかし、眠らなかったという人間として或いは動物としての致命的なミスを犯したことにより、月桂樹を頭に掲げ損なった。Dデイの最中別荘でパーティーの余韻に浸って砂漠の狐ロンメルとお見合いをしたアドルフやウサギとカメの兎を引き合いに出してしまえば逆の答えが導かれてしまうかも知れない。が、あくまでわたくしの見解では、鉄の塊を持ち上げ鏡に映った射精寸前のペニスのように隆起した肉体を見るときより、日中浴びせられたいやらしくも苛酷な人間の悪意を思い出しながら床に付くもいつの間にかに眠りに落ち、子らが学校に向かう音で目を覚ます自分自身にわたくしはわたくしの強さを感じる。そして逆説的だが、子らの朝の支度を全くせずに居ながらも自分自身を良い父親だと思う。もちろん弱い父親よりは強い父親の方が良いに決まっているという文脈あってのことだ。最近、更に実感を重ねたことがあった。結果的に双子の赤ちゃんの親権を勝ち取ったクライアントが敗北必至の家裁での手続きの途中、早朝に泣きながら電話して来た。わたくしが「どうしましたか、こんな朝早くに?」と尋ねると、その若い父親は「昨夜眠れなかったのです」と言った。何時に寝たかを聞くと、12時前には眠っていたという。それで何時に起きたか尋ねた。するとその若い父親は訝りなく「いつもは7時に起きるのに、目覚めたら5時だったのです。不安で、不安で…」と言って女が腐ったように泣いた。彼は日中泣き咽びながらも夜は少なくとも5時間は寝ていたそうだ。その生活を繰り返し、結果として不眠症に陥った母親に勝利した。彼の勝因はたった二つしかない。一つ目はわたくしと契約したこと、二つ目は言うまでもなく眠ったことだ。