親権者が定まらず離婚紛争が長引いてくると、業を煮やして、どちらかの親が子供を力ずくで他方の親の元から引き離し、奪い去っていくというケースがあります。その際に、使われる法律が人身保護法です。
適用の仕方としては、現実的に相手方のもとに子供を留めておくと、子供に悪影響を及ぼすおそれがあり、一刻も早く子供を引き取る必要がある場合は、直ちに人身保護法の適用を求めて、高等裁判所または地方裁判所に請求するという流れになります。請求があってから、1週間以内を目処に審問が開かれます。審問で相手方の行動の違法性が認められると、子供の引渡しを命じる判決が出ます。もし、相手方が判決に応じない場合は強制執行となります。
ただし、子供が自分の意思で相手方のもとに行った場合は、人身保護法による救済を受けることができません。また、実の親であっても、親権者や監護者の承諾なしに未成年の子供を連れ去れば、刑法224条の未成年者略取、又は誘拐罪になります。
強制執行までの流れ
人身保護法とは、不当に奪われた人身の自由を回復することを目的に制定された法律です。人身保護法の適用は、子供の争奪合戦の「最後の切り札」といわれています。